第五章

『デビー、私は棕櫚の木のテッペンでこの手袋を見つけたの。思わず飛び込んだ池の中。清々しい水の香り、きれいに曲がる光の束、こんなにもきれいな水をおそれる理由はなにもなかったのだときづいたわ。あなたには必要のなくなった手袋だけれど、届けにきてほんとうによかった。
”イケノソチラ”にはいろいろな色のカエルがいることもわかったわ。あなたがマジックガエルになって、以前のようにみんなを楽しませていることもわかったわ。親切なイボガエルさんともお友達になったわ。さあ私は旅に出ましょう。お礼に描いたイルボンさんの似顔絵にピッタリなブルーのインクを作るために、青いお花を探しに行かなくてはなりません』

『ちょっと待ってトオモ、この手袋は私には必要がなくなったけれど、今度はあなたに必要なのよ。イルボンさん、私達二人を乗せてあのマジックショーのステージに戻ってくれはしませんか?』
『このイルボン様にとっちゃあお安い御用さ。ふたりともしっかりつかまってろよ』

ぴょーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
『さあデビーのマジックショーの開幕よ。トォーモしっかりと見ていてね。この手袋にこの布をかけて、、ワン,ツウ、スリー』
そこにあったのは、手袋型のポシェト。四本指のポシェットの中にはイエロー,ブルー、レッド、ブラックのペンが入っていました。
ホールにいたお客様ガエル達もやんやの喝采です。

『さあトォーモ、このペンを使って色を塗ってみてちょうだいな。黄と青と赤との混ぜ方一つでどんな色でもつくれるのよ。ブルーのお花を探さなくともだいじょうぶ。あなたが嫌いだった池の水に飛び込んで、私に手袋を届けてくれたお礼です。』

『おおデビー、なんてステキなペンでしょう。ありがとう。早速優しいブルーの目の色を作って塗ってみるわ。そしていろいろな所へ行ってピンクやオレンジやパープルやのたくさんの色でいっぱいのカエル似顔絵を描いて暮らしていくわ。たくさんのカエルを描いていくうちに、ひと夏先にウエノセカイに飛び出した兄弟ガエルたちにもきっと会えるような気がしてきたわ。そして母さんガエルや父さんガエルに会えたなら、このペンで二人の似顔絵をそっくりに描くことにいたしましょう。』

*おまけの話
北の国へ行った鶏おじさんのお嬢さんの病気は無事に治りましたが、鶏のおじさんは手袋のとさかカバーのおかげで北国の住まいが気にいってそのままそこでくらすことにしました。今ではたくさんの孫達に囲まれて幸せに暮らしています。とさ(か)